macでインフォマティクス

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HTS (NGS) 関連のインフォマティクス情報についてまとめています。

複数のライブラリにまたがるエンリッチメント解析を行う Enrichr-KG

 

 遺伝子およびタンパク質セットのエンリッチメント解析は、オミックス実験から収集されたデータの解析において重要なステップである。Enrichrは、数十万件の注釈付き遺伝子セットを含む、人気のある遺伝子セットエンリッチメント解析ウェブサーバー検索エンジンである。Enrichrは、異なるカテゴリーから多くの遺伝子セットライブラリを用いてエンリッチメント解析を提供するのに有用であるが、ライブラリや知識ドメイン間でエンリッチメント結果を統合することで、仮説生成をさらに進めることができる。Enrichr-KGはナリッジグラフデータベースとWebサーバアプリケーションで、Enrichrから選択した遺伝子セットライブラリを組み合わせて統合的なエンリッチメント解析と可視化を行う。エンリッチメント解析結果は、遺伝子とそのエンリッチメント項を結ぶノードとリンクで構成されるサブグラフとして表示される。また、Enrichr-KGのユーザーは、遺伝子と遺伝子のリンクや予測遺伝子をサブグラフに追加することができる。エンリッチ遺伝子と予測遺伝子を含むクロスライブラリの結果をグラフで表示することで、データセットやリソースを超えて、遺伝子とアノテーションされたエンリッチ語彙の隠れた関連性を明らかにすることができる。Enrichr-KGは現在、転写、パスウェイ、オントロジー、疾患・薬剤、細胞種など、さまざまなカテゴリーから26の遺伝子セットライブラリーに対応している。Enrichr-KGの有用性を実証するために、いくつかのケーススタディを提供している。Enrichr-KGは、https://maayanlab.cloud/enrichr-kg で自由に利用できる。

 

Github


 

webサービス

https://maayanlab.cloud/enrichr-kgにアクセスする。

 

 

Entrez遺伝子シンボルのセットをテキストボックスにペーストする。画像はexample。

入力された遺伝子はEntrez遺伝子シンボルの辞書と照合され、その遺伝子がデータベースに登録されているかどうかがその場でリアルタイムに判定される。

 

最大5つの選択された遺伝子セットライブラリに対してエンリッチメント解析を実行することができる。FANTOMやhuman phenotype ontologyなどヒトの主要なデータベースに対応しているほか、pfam、KEGG、GO、Reactomeなども選べる。

 

さらに最大ノード次数、最大サブグラフサイズ、使用する遺伝子セットライブラリ、各ライブラリから含めるトップタームの数などを調整できる。

Submitをクリック。

 

出力例

上に選んだDBがハイライト表示され(灰色線のbox)、その下にグラフが出力される。

結果は、遺伝子(緑)とエンリッチされた語彙(ユーザーが選んだDB)を結ぶサブネットワークとして返される(ライブラリごとに上位にエンリッチされた語彙と、これらの語彙で重複する遺伝子を表示するサブグラフ)。

 

サブネットワークのレイアウトは、force-directed、circular、hierarchical に変更できる。

 

show edge labelsボタンでエッジの注釈を表示できる。またカーソルを遺伝子などのノードに合わせると、そのノードのネットワークが強調表示される。

 

DBのアイコンをクリックするとその場でグラフに追加したり除外したりできる(最大5)。KEGGを追加した。

判例は左端のボタンから表示・非表示を切り替えできる。

 

エンリッチメントの結果を表や棒グラフで見て、ライブラリ間の結果を要約できるようになっている。

bar view

バーの大きさは、Fisher exact testで計算されたエンリッチメントスコアの-log(p-value)に比例している。

 

Table view

 

カメラの右隣のアイコンをクリックすると、結果をEnrichrに渡して分析できる。

 

サブネットワークは、画像、フリーテキストで記述されたストーリー、またはシリアル化されたCSVファイルとしてダウンロードすることができる。画像はフリーテキスト機能で結果を要約した結果。

このような結果の出力方法は斬新に見える。

  • 結果は、共発現相関に基づく予測遺伝子でサブネットワークを補強したり、タンパク質-タンパク質相互作用や共発現相関に基づく既知の遺伝子-遺伝子リンクをサブネットワークに追加することができる。
  • 論文のsupplementaryにはいくつかの代表的なケースにおけるグラフ例が示されている。結果を正しく解釈するために役立つと思われる。

 

引用

Enrichr-KG: bridging enrichment analysis across multiple libraries 
John Erol Evangelista,  Zhuorui Xie,  Giacomo B Marino,  Nhi Nguyen,  Daniel J B Clarke, Avi Ma’ayan
Nucleic Acids Research, Published: 11 May 2023

 

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