macでインフォマティクス

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HTS (NGS) 関連のインフォマティクス情報についてまとめています。

サブ最適アラインメント空間からタンパク質アラインメントの信頼できる領域を可視化する EMERALD-UI

 

 過去40億年にわたる生命は、タンパク質とその三次元構造への集合能力によって形作られてきた。タンパク質配列アライメントは、生命の系統樹全体におけるタンパク質の進化と機能的適応を解明するための基盤技術となっている。一次配列のみから三次元タンパク質構造を予測する技術の近年の進歩により、配列レベルと構造レベルで異なる保存様式と機能が働いていることが明らかになった。タンパク質の保存パターンの違い、そして最適ではないアライメント構成で生じる可能性のあるその根底にある機能変化は、最適なタンパク質アライメント手法ではしばしば無視されている。そこで本著者らは、代替アライメント空間に隠された安定した構造コンフォメーションやタンパク質領域を可視化することで、未解明の生物学を明らかにするために設計されたオープンソースのインタラクティブなWebアプリケーション、EMERALD-UIを開発した。EMERALD-UIは、https://algbio.github.io/emerald-ui/ で入手できる。この原稿で説明されているバージョンのソースコードは、https://github.com/algbio/emerald-ui で入手可能で、Software Heritage: swh : 1: dir : 8b5a70160396d5e9a2e6d015c3b6f1426176d9a4 にアーカイブされている。

 

EMERALD-UIは、最適アラインメントだけを表示するのではなく、サブ最適アラインメント空間を探索することができる。use caseとしてHPに以下が記載されている。

  • Homology Analysis(相同性解析) 関連するタンパク質同士を比較し、配列間で保存されている領域を調べる。保存ドメインの候補を見つける用途に使える。
  • Evolutionary Studies(進化解析) 異なる生物種のタンパク質配列を比較し、進化の過程でどの領域が保存・変化したかを確認する。機能的に重要な領域ほど、進化的に保存されやすい。
  • Structure-Function(構造・機能解析) 配列上で保存されている領域を、タンパク質立体構造上の位置と対応させて確認する。保存領域が活性部位や結合部位などの機能領域に重なるかを調べられる。
  • Domain Mapping(ドメインマッピング) alignment-safe windowをもとに、機能ドメインやモチーフの候補領域を探索する。最適アラインメント(下で説明)だけでは見落とす可能性がある安定した対応領域を調べる。

 

Github

 

webサービス

https://algbio.github.io/emerald-ui/ にアクセスする。

 

Learn More about Alignment Safetyをまず確認する。

ペアワイズ配列アライメントは、あたかも正解が一つだけ存在するかのように提示されることが多い。これは、近縁タンパク質においては有用な簡略化だが、配列の多様性が高まるにつれて誤解を招く。このような場合、最適アラインメントとほぼ同じスコアを持つ別のアラインメントが多数存在することがある。ギャップの位置が少し変わるだけで、対応する残基の組み合わせが変わるため、最適解だけを見て解釈すると誤る可能性がある。Safety windowは、サブ最適アラインメントを含めても安定して残る局所的な対応領域である。つまり、最良のアラインメントだけでなく、スコアが近い複数の候補アラインメントを見ても、同じ残基ブロックが対応し続ける領域を指す(アラインメントが少し変わっても、その領域の対応関係が崩れにくい)。

 

<Getting started>

2つのタンパク質配列を入力し、パラメータを設定して実行する。シンプルに使用できる。

 

実際に使用するには2つのタンパク質配列を入力する。配列名を示すヘッダー行つきのFASTAフォーマット配列をアップロードするか、ウィンドウ内にペーストする。Uniprot IDで指定することもできる(右上)。

 

Descriptorには、配列名やタンパク質名を入力する。Sequenceにはアミノ酸配列を入力する。Uniprotに登録されている配列なら、Uniprot accessionでも指定できる。構造情報を合わせて確認したい場合は、各配列の下にあるFile uploadボタンからPDBまたはCIFファイルを読み込む(必須ではない)。

 

アラインメント計算の条件を変更できる。αは、alignment-safe windowをどの程度厳しく判定するかを決めるパラメータ。Δはサブ最適アラインメントをどこまで許容するかを決める。Δを大きくすると、より多くのサブ最適アラインメントを含める。αを大きくすると、より多くのアラインメントで共有される領域だけがSafety windowとして残る。

Advanced Optionsでは、アラインメントスコアの計算条件を変更できる。

 

マニュアルの説明も載せておく。

  • Δは、許容される最適性からの逸脱の度合いを制御する。Δが大きいほど、より多くの代替アライメントが含まれるため、通常は安全性テストを満たすのが難しくなる。Δが大きくなるにつれて、安全性ウィンドウは短くなったり、数が少なくなったり、あるいはその両方になることがよくある。
  • αは、コンセンサスの厳密さを制御する。α = 1の場合、ウィンドウはすべての許容アライメントで共有されなければならない。αの値が小さいほど許容度が高くなり、より長いウィンドウやより多くのウィンドウを取得できるが、堅牢性の保証は弱くなる。

 

出力例

Short Exampleの結果を見てみる。

 

この例では、EOCX11とQ9UDW1の2つのヒトミトコンドリア関連タンパク質を比較している。横軸がSequence A、縦軸がSequence B。今はタンパク質全体(赤枠)を見ている。緑色の区間は、Safety Windowを示す。複数のサブ最適アラインメントを考慮しても、対応関係が安定している領域を示す。

最適アラインメント、サブ最適アラインメント、Safety Windowsを同時に確認する図となっている。

 

青い線は、最適アラインメントを示す。この線に沿って、2本の配列の残基が対応づけられている。灰色の線は、サブ最適アラインメントを示す。最適解に近いスコアを持つ別の対応関係を表す。

まず青い線で最適アラインメントの全体像を見ることが推奨されている。次に、緑色のSafety Windowがどこにあるかを確認する(上図では左寄り中央のブロック)。灰色の線が多く分岐している領域は、代替アラインメントが多い領域となる。このような領域は、残基対応が不安定な可能性がある。

最終的には、緑色のSafety Windowを中心に、アラインメントが曖昧でなくロバストなアラインメントであり、生物学的に意味のある保存領域であるかどうかを確認する。

 

右側パネルでは、結果の詳細を切り替えて確認できる。General Informationでは、配列長やSafety Windowの数を確認できる。下の写真の状態。


Safety Windowsをクリックした。Safety Windowsでは、各Safety Window(緑ブロック)の位置を個別に確認できる。


Unsafe Windowsでは、対応が不安定な領域を確認できる。


Settingsでは、解析時のパラメータを確認できる。


Path Selectionでは、表示するアラインメント経路を選択できる。

 

この機能を使うには、ペアワイズアラインメント図のエッジをクリックしてから右のパネルのApplyをクリックする。選択したアラインメントエッジが赤線でハイライトされる。


Exportでは、図や結果をPNGやPDFなどの形式で出力できる。

 

構造情報が取得できる場合、下のパネルでSafety Windowを3D構造上にマッピングして確認できる。緑色で表示されている部分がSafety Windowに対応する領域。3Dビューの上部にはアミノ酸配列が表示される。Safety Windowに含まれる残基は、配列上でも緑色でハイライトして表示される。

配列上の保存領域と、構造上の位置を同時に確認できる。

 

middle sizeのデモだとより分かりやすい。

 

構造情報が取得できる場合、一番下ではTM-alignで重ね合わせ、タンパク質構造がどの程度似ているか構造上で確認できる。

RMSDは重ね合わせた原子間の平均的な距離のずれを示す。Aligned residuesは構造上で対応づけられた残基数を示す。仮に全く似ていないタンパク質同士を比較すると、折り畳みは全く異なるため、重なりがほとんど無い結果が得られる。

 

その下には、Safety Windowを配列アラインメント上に重ねた表示が出る。緑色の領域はSafety Windowに含まれる残基を示す。赤、青、紫、橙などの色はアミノ酸の性質を示す。

 

middle sizeの例

 

コメント

本ブログでは短いタンパク質間アラインメントのデモデータを使用しましたが、ミドルサイズとロングサイズのタンパク質間アラインメントのデモデータも使用できます。これらの方が分かりやすい結果かもしれません。長い配列のデモデータを試してみてください。

 

その他(マニュアルより)

  • 計算はWASMによりブラウザ内で実行され、UniProt、AlphaFold、RCSB PDBは配列・構造取得のために利用される。
  • EMERALD-UIの有効な使い方のひとつは、本ツールによるペアワイズ解析で得られたアライメントセーフウィンドウをタンパク質ファミリーMSAと比較することである。MSAは多くの配列にわたる保存性を要約する一方、ペアワイズ準最適空間解析は、単一の最適アライメントが曖昧な場合でも頑健性を保つ位置を明らかにすることができる。

  • MSAは多数の相同タンパク質にわたる全体的な一貫性を最適化するのに対し、EMERALD-UIは最適ではないアライメント空間全体における局所的なペアワイズ頑健性を定量化する。両者が一致すれば、候補となる機能残基に対する信頼性が高まり、不一致は進化的な柔軟性、ファミリー特有の制約、あるいは構造、ドメイン、変異に関する証拠を用いて追跡調査する価値のある領域であることが示唆される。

  • EMERALDの2023年の論文では、生物多様性に富むSwissProtタンパク質クラスターを用いた大規模実験において、アライメントセーフ区間が、特に配列の多様性が高いペアに対して有益であることが示された。これらの場合、セーフウィンドウは配列全体の長さのごく一部しかカバーしていなかったが、構造的に安定した残基のかなりの部分を保持していた(Grigorjew et al., 2023)。
  • タンパク質配列は大きく変化していても、立体構造や機能が保存されることがある。逆に、配列アラインメント上では対応しているように見えても、構造的には不安定な対応である場合がある。EMERALD-UIは、以下の用途に向く。

・タンパク質ペアのアラインメントの信頼できる領域を確認する
・サブ最適アラインメントを含めて保存領域を探索する
・UniProt配列やFASTA配列からタンパク質比較を行う
・AlphaFoldやRCSB PDB由来の構造情報と合わせて可視化する

引用

EMERALD-UI: An interactive web application to unveil novel protein biology hidden in the alternative alignment space 

Andrei Preoteasa , Andreas Grigorjew , Alexandru I Tomescu , Hajk-Georg Drost

Bioinformatics, Published: 14 May 2026

 

Sensitive inference of alignment-safe intervals from biodiverse protein sequence clusters using EMERALD.

Andreas Grigorjew, Artur Gynter, Fernando H.C. Dias, Benjamin Buchfink, Hajk-Georg Drost, Alexandru I. Tomescu.
Genome Biology 24, 168 (2023).