分子ビューアーの長い学習曲線は、研究者が初めて構造生物学の分野にアプローチする際の妨げとなっている。ここでは、次世代のオンライン分子ビューアーとして、軽量で強力かつ使いやすいインターフェースである'The Protein Imager'を紹介する。さらに、このインターフェースは、出版物レベルの分子イラストを生成できる自動化されたサーバー側レンダリングシステムとリンクしている。Protein Imagerのインターフェースは、この分野の初心者にも専門家にも使いやすいように設計されている。このインターフェースは、モバイル機器でも高い応答性を維持したまま、非常に複雑な分子図を作成することができる。Protein Imagerインターフェースは、https://3dproteinimaging.com/protein-imager からオンラインで自由に利用できる。
Guide(PDF)
https://3dproteinimaging.com/info/interface/overview.pdf?v=2.12
You tube channnel
gallary
https://3dproteinimaging.com/portfolio/#proteinImagerIllustration
Here you can see a recent cryoEM model of the membrane-bound GBP1 oligomer (PDB code: 8R1A)
— 3D Protein Imaging (@proteinimaging) 2024年5月12日
Rendering by @fenguita made with proteinimagerhttps://t.co/GqKJ1QwoeB pic.twitter.com/NWl6MJoPKv
Protein Imagerプラットフォームの特徴
- アクセシビリティに優れ、無料、完全オンライン、モバイル対応
- 使い方はとてもシンプルで、複雑なビューも可能
- ワンクリックで高品質な分子イラストを得ることができる
- 簡単(ワンクリック)なメッシュエクスポート機能(メディカルイラストレーターに便利)
- プロジェクトの保存とオンライン共有
https://3dproteinimaging.com/にアクセスする。
最初に右上からアカウントを作成する。メールアドレスを記入してアクティベートする。2、3分で行える。
下にスクロールしてProtein Imagerにアクセスする。
https://3dproteinimaging.com/protein-imager/
Protein Imagerに入った。
画像の下の方にあるのはexampleの構造データ。
pdb, pdbqt, cif, mmtf, gro、PQR、SDF、MOL、MOL2形式の構造データを指定する。またはPDBの構造を指定する。
ここではPDBの2E4Aを指定、fetchをクリック。
可視化された。4つのchainからなるD-amino acid oxidaseとなる。内部にはFADが結合している。周囲の水分子も表示できる。
左右にメニューが表示されている。構造は自由にスクロール、拡大縮小、回転できる。右クリックしたままドラッグすると構造自体を移動できる。左右のメニューは、構造を回転や移動させている時は非表示になり、操作に集中できる。
メニューを順番に見ていく。
一番左上に並んだボタンは、フルスクリーンモードの切り替え、パネルの表示/非表示の切り替え、メニューのフォントサイズの拡大/縮小などのボタンになる(メニュー全体のサイズを拡大縮小できる)。
ボタンの下のメニューは、構造の特定の部分だけを選択し、表示・非表示を切り替えるための選択のパネルになっている。例えば、NMRによって解かれた構造を含むPDBファイルには、通常は複数の状態の構造が含まれているが、
各NMR状態は、左側のStructure hierarchyサブパネルを通して個別に、あるいはまとめて選択出来る。
ChainA だけ非表示としてみた(下画像)。画像左にあるように、ポジションを正確に把握しながら1アミノ酸残基の単位で表示、非表示を切り替え出来る(左のパネルを折り畳むには、Model0の部分をクリックする)。
表示、非表示はView selectionのModelから構造をクリックしても出来るようになっている。Model => Residueを選択、
クリックしたアミノ酸残基だけが非表示になった。
同様に、ModelからchainやModelなどの大きな単位でもクリックして非表示にできる。戻すにはStructure hierarchyサブパネルの構造を表示に切り替える。
Advanced selectionsサブパネルは、異なる基準("By Entity"、"By Proximity"、"By Range"、または "By Property")に基づいて複雑なセレクションを作成(または修正)すできる。Advanced selectionsサブパネルのユニークな動作モードでは、ターゲットの選択状態がアクティブかどうかは必要とない(マニュアルより)。
名前やポジションなどで該当するものを一括で選択し、非表示にしたりできる。
続いてメインパネル下のパメル。
下のパネルはタブになっていて、タブを切り替えできるようになっている。
左端のlogタブ
sequenceタブ
構造の特定のサブユニットをクリックすると、選択されたサブユニットのアミノ酸配列がハイライトされる。
Viewing optionタブでは、表示スタイルを変更できる。具体的には、構造のアミノ酸残基などを表現している〇の枠線の太さや非表示・表示の切り替え(アウトラインのみのスタイル)、正投影図と透視図の切り替え、マテリアルの光沢の変更、カラーリングとグレースケール適用、背景色と透明度の設定、内部色の設定、シャドウのON・OFFなど。
シャドウのパラメータは下のshadowingボタンをONにすると出てくる。
resizeイメージでは、メインパネルのウィンドウサイズを変更できる。レンダリングを開始する前に、表示オプションのサブパネルを使って希望の比率にリサイズする時にも使う。
4kディスプレイだともっと幅広く表示させたいが、デフォルトのサイズが最大となっている。
animationタブからは構造を常時回転して表示できる。
Distancesサブパネルは、メインウィンドウで2つの原子を選択することで、2つの原子間の距離を直接測定するために使用される。ラベルとコネクターのサイズと色もカスタマイズできる(マニュアル参照)。
Membraneサブパネルでは、メインウィンドウに膜構造を配置できる。配置された膜は、小さな球でできた円形の二重層のような形で表現される。膜はもともとメインウィンドウ上で拘束されているため、膜に対してタンパク質構造を動かすことで正しく配置できる。メインウィンドウのウィンドウに表示されるスイッチを使って、膜の拘束を簡単に解除することができる。Membraneサブパネルには、膜の半径、二重層の間隔、グリッドの間隔、球のサイズ、各層の色を変更するためのさまざまなオプションが用意されている(マニュアルより)。
続いて右側のパネル。右のStructuresパネルでは、インターフェイスにロードされている分子構造を切り替えたり、異なる構造間の構造のsuperimpositionsを実行できる。
Current structureサブパネルでは、現在の構造を中央揃え、非表示、または削除できる、また、結晶構造のアセンブリの生物学的単位(BU)を選択できる。
Selectionサブパネルでは、新しいセレクションを作成したりデフォルトのセレクションを復元できる。セレクション名の横にある目のアイコンをクリックすることで、セレクションを可視化したり非表示にしたりすることができる。画像では、ProteinとLigands(FAD分子)、Waterとなっている。
歯車をクリックすると表示されている構造の表現を細かく調整できる。
画像はProtein str.1の歯車をクリックしたところ。Protein str.1の下に水色のメニューが展開されている。
水色のメニューのRadiusの値を小さくした。
Radiusを元に戻し、今度はOpacityを小さくした。
Opacity右のBase色パネルをクリックして、色を緑に変更した。
Base色パネル下のBlend色パネルをクリックすると、ベースの色に他の色をブレンドできる。黒めの赤をブレンドした。
SphereをオフにしてStickをオンにした。
Sphereをオフにして、Stickをオン、SurfaceをオンにしてOpacityを低めにした。
AssemblyでBU3を選択、Sphereをオフにして、Cartoonをオン、SurfaceをオンにしてOpacityを低めにした。
元素(原子)のタイプに応じたカラーリング設定も利用できる。Color by Element(原子の種類に基づいた色の適用)とした。各原子の色は右のパネルから変更できる。
利用できるカラースキーム
その下には、Surface、Tune、Stick、Cartoon、Labelが並んでいる。
これらの 利用可能な表現方法とカラーリングについては、マニュアルに詳しい説明がある(デフォルトはSphere)。重要なのは、構造ごとに別の表現方法を指定でき、目的に応じて細かい調整ができることにある。
New selectionサブパネルでは、追加のセレクション(ProteinやWaterなどをセクションと呼んでいる)を作成できる。それにはNew sectionをクリックする。
作成時は名前を指定する。testとした。
Waterの下にtest.str. 1が追加された。
表現を調整後、最終的な高品質分子レンダリングは、メインメニューの"Request rendering" -> "Get Image"から進める。これは、サーバー側のレンダリングプロセスを経て生成される。まずカメラマークの右のアイコンをクリックする。
クリック後にoptionを選択し、レンダリングパラメータを設定する。
いずれか選択し、下のRequest renderingをクリック。
上に再びpop upが出現する。Get imageを選ぶ。Eメール通知機能も用意されている。
しばらく待つとダウンロードの準備が出来たことが通知される。cite usの右のボタンをクリックすると、高品質な画像やメッシュ(VRLM2 format)としてダウンロードできる。
VRML は、色およびテクスチャ情報を含む 3D ファイル フォーマットで、CADに読み込んだり、例えば3Dプリンターでプリントしたりできる(*1)。
論文より
- 高分子の構造データは、構造バイオインフォマティクスの専門知識に乏しい研究者でも、目的の情報を視覚化し、科学出版物、学会発表、口頭発表用の高品質な図(すなわち、出版品質の図)を作成するために、容易にアクセスできなければならない。さらに、分子研究に直接携わっていない専門家(サイエンスコミュニケーター、教師、ライターなど)が、科学的普及や教育プロジェクトのために、高分子の高品質イラストを作成する必要が増えている。
- 初期のマイルストーンRibbons (Carson, 1991)、Kinemage (Richardson and Richardson, 1992)やRasMol (Richardson et al、2002; Sayle and Milner-White, 1995; Weiner et al., 2000)から、YASARA(Krieger et al., 2014)、ChimeraX(Goddard et al., 2018)、PyMol(DeLano, 2002)のような人気のあるアプリケーションがあり、複雑なタスクを実行して高分子の高品質なレンダリング表現を生成できるが、しばしば複雑なインターフェースと対話する必要がある。例えばPyMolは複雑なタスクを実行するためにコマンドライン構文の知識を必要とする。
- The Protein Imagerの背後にあるアイデアは、通常オンライン分子ビューアに付随するユーザーフレンドリーで完全なグラフィカルユーザーインターフェースと、複雑で高品質な分子表現を作成するスタンドアロンアプリケーションの機能を組み合わせることである。新しいオンライン・インターフェースはスクリプトやコマンドラインの専門知識を必要とせず、構造バイオインフォマティクスの分野に初めて足を踏み入れる人でも、ボタンを押すだけで目的の高分子イラストを作成できる。
コメント
アクセスして触ってみてください。上手く表現できない時は、demoの構造を読み込んで、パラメータをどうカスタムしているか確認してみると良いと思います。またさらに高品質なサービスとして、商用のサービスとはなりますが、論文、ポスターなどのイラストレーション、高品質なグラフィックアブストラクトの依頼もできるようです。興味がある方はコンタクトから連絡してみると良いのではないでしょうか。
https://3dproteinimaging.com/contact/
引用
The Protein Imager: a full-featured online molecular viewer interface with server-side HQ-rendering capabilities
Gianluca Tomasello, Ilaria Armenia, Gianluca Molla
Bioinformatics, Volume 36, Issue 9, May 2020, Pages 2909–2911
関連
・
大規模生体分子構造の3D可視化のためのウェブアプリケーション Mol* Viewer
https://ja.wikipedia.org/wiki/VRML
参考ツイート
“Beautiful proteins”series entry #15
— Dr. Ivana Duic (@IvanaDuic) 2024年5月12日
This is WD40 domain of a spliceosome protein Prp19.
PDB: 5M89
Rendering done in @proteinimaging 🎨👩🏻💻 #sciart #structuralbiology #scienceillustration pic.twitter.com/YCy3Ec89Kv
Complex between nucleosome core particle (H3,H4,H2A,H2B) and 146 bp long DNA fragment.
— Dr. Ivana Duic (@IvanaDuic) 2024年2月29日
PDB: 1AOI
Rendering in @proteinimaging 🖍️👩🏻💻#sciart #structuralbiology pic.twitter.com/OmtVU12aM2
First in the series “Beautiful Proteins”, PDB 3JQK - Moco!
— Dr. Ivana Duic (@IvanaDuic) 2024年1月22日
Stay tuned for more, stickers soon available. Rendering done in 3D Protein Imaging#sciart #prettyprotein
I will be open for commissions from early March 💫🎨🖌️ with molecule of your choice! pic.twitter.com/GUzITgAUD0