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HTS (NGS) 関連のインフォマティクス情報についてまとめています。

低コスト且つ短時間で行える高分子量gDNA抽出プロトコル

 2019 1/7 タイトル修正

 

 複雑なゲノムの新規シーケンシングは、高品質のリファレンス配列を求める研究者にとっての主要な課題の1つである。 多くのde novoアセンブリはショートリードに基づいており、断片化されたゲノム配列を生成する。 リード長が10 kbを超える第3世代のシークエンシングでは、複雑なゲノムの構築が改善されるが、これらの手法には高分子量のゲノムDNA(gDNA)が必要になる。 ショートリードシーケンシングのためのgDNA抽出法は、この目的には適していない。 バクテリア人工染色体(BAC)ライブラリー用のgDNA調製方法はこの目的に適合させることができるが、これらのアプローチは時間がかかり、そしてこれらの方法のための市販のキットは高価である。 アガロースゲルマトリックスでメガベースサイズのDNAを調製することは可能だが(論文より ref.2)、このプロセスには3日かかり、アガロースプラグからDNAを抽出するのは困難である。この論文では、バクテリア、植物、動物から高分子量gDNAを迅速かつ安価に抽出するためのプロトコールを紹介する。 この方法は、1サンプルあたり<0.20のコストで、1本のマイクロチューブで最大150 kbのマイクログラムの高分子量ゲノムDNA(gDNA)を抽出できる(図1)。ヒマワリの葉のサンプル用にこのプロトコルを微調整し、その後バクテリアとヒト細胞用に検証した。ヒマワリは、ポリフェノールや、多糖類やタンニンなどの他の汚染物質を含むことが知られている(ref.3)。したがって、この植物種から非常に純粋なDNAを抽出することは一般に困難である。ヒマワリの葉のサンプルでは、平均リード長12.6kbおよび最大リード長80kbを生じた。

 

手順

1、3週齢のヒマワリ苗木から葉を収穫する。サンプルを直ちに液体窒素中で凍結し、そしてDNA分解を防ぐために粉砕するまで-80℃で貯蔵した。

2、葉を液体窒素中で微粉末に粉砕、ヌクレアーぜが働かないよう直ちに2に移る。

3、細胞膜を溶解するdetergentとして、SDSベースのバッファー(ref.4、5)を使い、サンプルを溶解する。SDSは、DNAを分解するタンパク質、特にエンドヌクレアーゼを中和し不活性化する。RNAを消化するため、バッファーにRNase Aも含める。溶解均質化の程度は、抽出プロセスの収率およびDNAの純度とも相関する。場合によっては、溶解バッファーを加熱すると溶液の均質化に役立つが、サンプルを65℃以上で1時間以上加熱すると、DNAが損傷することがある。

4、酢酸カリウムを添加し、不溶性のドデシル硫酸カリウムを形成させる。タンパク質と多糖類はドデシル硫酸カリウム複合体を形成し、遠心分離によって除去される(ref.6)。

5、次に、溶解溶液からのDNAを精製する。ここでは磁気ビーズを選んだ。カルボキシル化磁気ビーズは費用対効果が高く(ref.7)、DNAのせん断を最小限に抑えることができる。以前に記載されているように(ref.78)PEG8000を使い、DNAをビーズに結合させた。 PEG8000は安全で、イソプロパノールやエタノールと比較して沈殿物の発生が少なくなる(ref.9)。

6、gDNAを70%エタノールで洗浄し、磁気ビーズに結合しにくい汚染物質、および前のステップで使用した試薬の残りを除去した。緩衝溶液中に再懸濁してビーズからDNAを溶出した。

7、分光光度計を使用してDNA溶液の純度を評価した。 A260 / 230の比率は、特定の汚染物質の存在によって影響を受ける。著者らは、230nmの光を吸収する汚染物質を完全に除去するためには、70%エタノールでビーズを再懸濁するプロセスが重要であることを見出した(論文 表1)。 DNA強度を低下させることなく、さらに2回洗浄することができた(data not shown)。本発明者らは、A260/280比が>1.8を得た。これは、DNA溶液がタンパク質を含まないことを示している。分光光度計または蛍光インターカレーティング色素に基づく方法のいずれかによって定量された濃度は同様であり(論文 表1)、DNA溶液が純粋であることを示していた。抽出により、90 mgの新鮮なヒマワリの葉から6.7〜7.8 µgの高純度DNAが得られた。

 

評価

 本プロトコール(70%エタノール再懸濁あり/なし)とQIAGEN Genomic Tipsによって抽出されたヒマワリのgDNAを、パルスフィールドアガロースゲル電気泳動で評価した(表2)。さらにHEK293ヒト細胞gDNAとNEB 5-alphaエレクトロコンピテントE. Coli gDNAを本プロトコールで抽出したものも加えた。本プロトコールを使用して抽出したDNA溶液をGenomic Tips 20/G commercial kit (QIAGEN, Hilden, Germany) で抽出したDNAと比較すると、gDNAの純度と状態は両方のプロトコールで同様であった(論文 表1および図2)。 )しかし、市販のキットは35倍高価で(サンプルあたり7ドル)、著者らの1時間で終わるこのプロトコルと比べると、少なくとも3時間を必要とする。

 

 最後に、BluePippinの4つのDNAサイズカットオフ (12〜20kb) のPacBioライブラリーを使用して、PacBio RS II(カリフォルニア州メンロパークのPacific Biosciences)でシークエンスして本プロトコールによるヒマワリgDNAの品質を検証した(論文 表2)。シーケンス反応の阻害は観察されなかった(10–15 kb for 240-min-long movies and up to 17,126 bp for 360-min-long movies)。

 

 

引用

Extraction of high-molecular-weight genomic DNA for long-read sequencing of single molecules.

Mayjonade B, Gouzy J, Donnadieu C, Pouilly N, Marande W, Callot C, Langlade N, Muños S

Biotechniques. 2016 Oct 1;61(4):203-205.

 

下記リンクも合わせて読むことをお勧めします。

http://lab.loman.net/2018/05/25/dna-extraction-book-chapter/

 

追記

protocol.io

DNA size selection (>1kb) and clean up using an optimized SPRI beads mixture

Nanopore公式から、このprotocol.ioの方法をさらにmodifyしたプロトコルを入手できます。ログインしてアクセスできるこのページの下の方にあるSPRI size selectionをクリックしてください。